海老民の新そばと北園克衛。そしてミステリーで夜更かしだ。
2007年 12月 06日
その後、日本に戻る時にその薬師像を抱きかかえた蛸に遭遇したそうだ。そして、目黒に来た時に護持の小像を納め、蛸薬師如来と讃えたのである。
また、ここには「御撫石」(おなでいし)なる石が在る。江戸の頃から、この石でイボを撫でると取れると云われており、病気平癒のお護りとされている。
この蛸薬師のすぐ隣に在る「そば処 海老民本店」はこの界隈の方々に古くから愛されている蕎麦の名店だ。郵便局に寄った帰り道、ちょっと足を伸ばして「海老民」の新そばで昼飯をとることにした。
この日は、信州栄村産の辛味大根を使った「辛味おろしせいろそば」を戴いた。
雑誌「芸術新潮」の中の原田治さんのコラムで、北園克衛について書いていた。ミステリーと北園克衛の表紙デザインの関係についてだった。
もともと自分が学生時代に読んでいたハヤカワ・ミステリ文庫の「エラリイ・クイーン」シリーズの表紙の装丁が北園克衛の手によるものだった事は判っていたが、当時は何も気にせずに読んでいたのだった。この展覧会を見て改めて北園克衛の魅力に触れ、持っていた文庫本を再び探したものだった。
詩人にして、装丁家の北園克衛は原田さんが十代の頃からの憧れだったと記している。
30年余り前原田治さんは、晩年の北園克衛が文庫本のブックカバーデザインをするなど思いもよらない事だったので、嬉しくて2冊ずつ購入したそうである。一冊はその表紙デザインを綺麗にとっておくために、もう一冊はカバー付きのまま読み耽るために。原田さん、凄いなぁ。
原田さんのブログ「原田治ノート」に、このコラムの追記のような事が書いてあった。「原田治ノート」
今回の芸新のコラムの為にブックカバーの図版を選び、今も再販されているハヤカワ・ミステリ文庫を何冊か買ってきたら原田さんが当時購入したものと、表紙の刷り色がかなり変わっている事に気がついたそうだ。「緋文字」と言う作品が在る。原田さんの保有する初版の文庫本の表紙の色は下の四角の色がゴロワーズ・ブルーとの事だった。ところが、再販された本を見ると淡い紫色になっていたそうだ。
そして、北園克衛のデザインのみならず、その色彩感覚までも大好きな筆者としては大変許しがたき事だと申していた。うん、うん、まったくその通りだ、と思って僕も実際に32年前に買った文庫本を出してみた。
イヴ・クラインの「クライン・ブルー」が在るように、北園克衛ブルーだって在るのだ。いつか原田治さんの持つ全17冊のコレクションを見せてもらいたいなぁ。
さて、数十年振りに読み返したエラリー・クイーンは実に面白かった。
「緋文字」は、150年も前にナサニエル・ホーソーンの代表作である「緋文字」をベースにした小説だ。17世紀、植民地時代の米国ボストンを舞台に「姦通罪」をテーマにした物語である。こちらの方はヴィム・ヴェンダースが映画化もしているので観た方も多いだろうね。余談だが、この映画アメリカが舞台なのに全てドイツ語だったっけ。こーゆー処、ヴェンダースらしいね。
この名作品を現代ニューヨークに置き換え、洒落たミステリーに仕立て直しているのは、ホーソーンへのオマージュか。ついつい読み始めたら止まらなくなってしまった。
それにしても「一番搾りスタウト」ってイケるなぁ。