小さな桜草で、少しだけホッとしてみようか。
2008年 06月 10日
朝から湿度の高さに悩まされ、午後に雨になったかと思いきや、打ち合わせに出掛ける頃には太陽が顔を出して来た。
もう、傘はいらないナ、と思って出掛けたら徐々にまた空が暗くなって来た。
赤坂で打ち合わせが終わった時には爆音の様な落雷が鳴り響いてる。
参ったね。TBSの裏手にはタクシーも通らず、赤坂通りまで出た時には前身ずぶ濡れになって仕舞った。
濡れてすっかり服の色が変わり果てた頃、漸くタクシーが捕まった。
恵比寿ウェスティンまでクルマをかっ飛ばして貰い、少し早めにホテルに入る。ホテルのトイレはちゃんとしたハンドタオルが用意されているからイイネ。
濡れた頭を吹きとってたら、相手が30分程遅れるとの連絡が入った。
あぁ、そのお陰ですっかり洋服も乾いたのだった。ホッ。
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初夏の北海道は気持ちが良い。
イサム・ノグチ設計の「モエレ沼公園」も美しい限り。
別に札幌が桜草の地では無いのだが、我が父の道楽が桜草集めなので、桜草の花見をするのである。
此れまで様々な趣味を愉しんで来た父が晩年ひたすら取り組んで居るのが桜草なのだ。
シナトラに始まり、モダンジャズ、ニール・ヤング、ライ・クーダー、イタリアオペラ、マリア・カラス、三味線、長唄、斉藤真一の瞽女(ごぜ)の絵収集と多彩多趣味の人生を歩んで来たのだが、半端じゃ済まない凝り性の性格なので、毎年毎年増えていく種類の数に圧倒されるばかりだ。
プリムラと呼ばれる花があるが、此れは西洋桜草と云い、日本の桜草とは違う種類だ。日本でも全国的に愛好家がおり、独自の品種改良などを重ね、登録しているので、今では200種類以上の桜草が有るそうだ。
そんな中で、北海道にも愛好家が二人居る。
一人は小樽に住む方で桜草の文献なども記しており、全国的に有名な愛好家である。そして、もう一人が我が父なのだ。
どうスか、此れ!呆れるでしょう。
桜の花に似た小さな桜草は江戸時代に庶民の間で人気が出始め、巣鴨界隈の植木屋や農家などでも栽培され江戸市中に売られていたそうだ。
白、桃色、薄紫、朱色など色も鮮やかだが姿かたちがそれぞれまるで違う所が面白い。
また、それぞれ特徴を捉えた「云い得て妙」な名前が良い。
中には、こんな名前もある。
竜田姫、漁り火、薄化粧、玉光梅、母の恵み、武蔵野、紅葉狩り、綾瀬川、末摘花、高根の雪、晩春、紫式部、雪月花、鈴の音、吹上桜、などなど挙げ出したらきりがない。
5月の後半から花が咲き始めるが6月に入ってしまうともうしぼみ出すので花を切り落として行くのだそうだ。そうしないと翌年美しい花が咲かないらしい。
ずっと眺めていても飽きない程、可愛い花だが、厄介な課題もある。
「いずれ此の桜草の世話はお前に任せたから」と云われているのだが、さて一体どうやって世話をすりゃあ良いのやら。まったく、今から唸るばかりなのでアル。
我が国は草も桜が咲きにけり
いつ詠んでも素晴らしい。小林一茶の名句だね。
そう云えば、前に俳句の話をしてた時のこと。
「こりゃ名句だねぇ」って云うと友人に「何、ナガシマみたいな事言ってんだよ!」って返されたのだ。名句を「メイク」と勘違いしたんだろうけど、日本語ってオカシイね。
昨日も地下鉄の車内吊り広告を見ていたら、水の広告で「軟水」ってのが有った。
僕が「軟水ってさぁ?」って話をし出すと、いきなり横から「今、渋谷でナンシー関の展覧会、やってるよねぇ」ってまるで違う事を言う奴が居たのだ。
しかし、軟水で「ナンスィー」ってのも笑かしてくれたね、まったく。
まーどーでも良いけど。
桜草摘まずに帰り君想ふ。
なんて詠んでみたけれど、枯れる前に摘んでしまうのだナ。