コスモスの花咲く軽井沢まで、久々に小旅行。
2008年 09月 18日
恵比寿から埼京線に乗り、大宮に出た。構内の書店で本を探してみる。
これだけ新刊が出ていると読む方が追いつかないね。まぁ、旅には文庫本の方が都合が良いので、取り敢えず新刊本は無視。文庫の棚へ移動。
買い逃していた単行本がどんどん文庫になっていた。伊坂幸太郎も奥田英朗も森見登美彦など、読みたかった本が文庫本になっている。
その中で手に取った一冊は、重松清の「その日のまえに」だった。確かこの秋に大林監督で映画化する小説だ。映画を観る前に読んでおかなくちゃ、と旅の友はコレに決めたのだ。
日常の中にあるありふれた幸せ、家族や友人の間に訪れる生と死を見つめる七つの短編が収められている。夏の終わりには丁度良いかナ。
大宮から新幹線で一駅の軽井沢まで行く事にした。ぶらりと行ける距離も良い。
短編は、短い小旅行にはもって来いだ。軽井沢駅に着く間に最初の一編「ひこうき雲」を読み終えた。秋の空に様々な想いが交差した。
駅からまっすぐ旧軽井沢まで、ぶらりと歩いた。
ミカドコーヒー店も混んでいた。何も変わらない風景が時計の針を逆さに廻しているかのようだ。
軽井沢で仕事をしている友人に教えて貰った創作和食の店「Ogosso」で夕飯を食べることにした。オゴッソとは信州の方言で「ご馳走」の事だと聞いた。
皆から「俊ちゃん」と声が掛かり、あっちこっちの席で笑顔のキャッチボールをしているのだ。
そうだね、さながら軽井沢の「なるきよ」って感じだろうか。料理もお任せにして、美味しい軽井沢の旬をアテに酒を嗜んだ。
先ずは地元で採れた法蓮草のお浸しから。
「喉が乾いたからビールを早く!」とけしかけたら、俊ちゃん急いで持って来た。ところが、親指サイズの小ジョッキだった。
続いて、カボチャの煮浸し、アメイラ・トマトが出てきた。
「軍鶏(しゃも)の鳥わさ風」が日本酒に合う。
酒が進んだところで、目当ての名物「ぎたろう軍鶏スキ」の登場だ。
シャモスキの味を更に引き立てるのが、卵だ。
オゴッソが扱う軍鶏は、長野県上伊那郡辰野町で飼育された鶏だ。
プリプリでジューシーな軍鶏のもも肉やレバー、砂肝、鳥皮などが特製の割下でグツグツの煮込まれる。
心行くまでシャモスキを堪能したら、最後の仕上げはおじやなのだ。程よく甘い汁には軍鶏の旨味がたっぷりと濃縮されている。此処にご飯を入れ、卵をたっぷりと廻し入れ、蓋をしてじっと待つ。
外へ出ると、軽井沢の夜は霧に包まれていた。温暖化のせいか、ここ数年軽井沢も霧の発生が少なくなっているそうだ。
タイミングよくキャンセルが出て部屋が取れたと云うので、「ホテル音羽の森」に泊まる事が出来た。
鳥の声に目を覚まし、珈琲で眠気を吹き飛ばす。
1時間半ほど歩き、小腹も空いたのでスモークの店「薫製工房 煙事」(えんじ)で昼飯をとる事にした。
じっくりと浸かり、過ぎ行く夏を洗い流そうと思うのだが、中々そんなに早く夏は終わらないのかナ。
サウナでじっくりと汗だけは出すことが出来た。
一時間に一本のシャトルバスが来るまで、まだ暫く時間が有った。また文庫本を取り出して、一編読み出した。
バスは軽井沢駅の南口、アウトレットモール側へと着いたが、さして買い物もしたい訳じゃなかったので、そのまま新幹線に乗る事にした。
軽井沢では、もう至る所でコスモスの花が咲いていた。ひと足早い秋を感じながら、残暑厳しい晩夏の東京へ戻ったのだ。
帰りの新幹線の中で、最後の短編を読み終えた。