いろんな先達の随筆集などをめくっていると言い回しや漢字の当て方に人それぞれに特徴が有り、それがまた判ってくると実に面白い。とりわけ僕の場合は食や酒にまつわる随筆が多いのだが、古い本を読み返してみて愉しい発見をすることがある。
酒の友矢野君が先日「神田村・兵六亭」と云う本をネットで見つけて読んでいると聞いたので、僕も久しぶりに読み返している。まぁ、また兵六通いをしている事も有り、初代兵六店主平山一郎氏のエッセイを読み直した。
「夕立になってしまった」のしまうの表現を「夕立になって了った」と記している。なるほど、気にしていなかったが、総て「了う」となっていた。僕は気に入った表現が有ると、自分の文章にも用いる事が多い。
「何何してしまう」のしまうは「仕舞う」と当てるのが気に入って暫くの間使っていた。これは、浅草の老舗寿司屋「弁天山美家古」の主人、内田栄一氏の随筆「浅草をにぎる」を読んで以来、ずっと好きで使っていた。そして、最近はまたひらがなに戻して記している。
「浅草をにぎる」はとても面白い随筆だ。浅草で長年寿司を握り続けた主人の思い出話や若い世代への一過言までを四季にわけて綴っている。また、最後に必ず一句詠むのだが、これもまた素晴らしく寿司を握る事もまたクリエィティヴな一面が重要なのだナと感心してしまうのだ。また、その句を引き立てるように毎回中尾彬氏の挿画があるのだ。
ひと筋に生きて悔いなき秋日中
多彩な方は凄いネ。装丁は僕の大好きな矢吹伸彦氏が手掛けている。
イラストレーターの矢吹さんが、とても控えめに品良く仕上げており、この随筆は僕のお気に入りの一冊だ。
週末は朝から立石で友人ビリーと待ち合せをして、「宇ち多”」へ。
日本橋の老舗鰻屋「清川」で仕事をしている酒仲間植草さんが、利根川の天然うなぎが9匹入荷したよ、と教えてくれた。利根川の天然かぁ、もうほとんどお目に掛かれない代物だね。10月の終わり頃になると「ボッカ鰻」と云う腕くらい太いのが上がるのだよネ。でも、懐具合と相談しなくちゃ喰えないナ。
この日は梅割り3杯呑んで、定量。
次の店まで移動だ。
「ゆう」のカウンターで話に花が咲き、ビリーと二人で浅草まで呑み歩いた。
「捕鯨船」が開いておらず、近くのカラオケスナックへ。夕方からまた浅草で呑む予定が入っていたが、まだ午後の2時を廻ったところだったので、一度帰宅して一眠り。酒が抜けないまま、また一路浅草へ。
先週開店したばかりの「簑笠庵(さりゅうあん)」へ裏を返しに行く事に。暖簾も完成して良い雰囲気になっていた。
先客にひとみ姐さんたちだ。この晩も美味しい酒のアテに舌鼓を打ち、ビール、焼酎、日本酒と大いに吞んだ。
このしめ鯖も美味かった。絶妙な〆具合。
自家製イカの塩辛もたまらん旨さ。
そして極めつけはアジフライだったナ。骨まで美味しく揚げてくれ、酒が進んだ。
この夜も例の如くカウンターで眠ってしまった。さすがに朝から呑み続けだと躯に堪えるなぁ。浅草からどうやって帰ったか未だに記憶なし。トホホ。