東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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2015年 07月 24日 ( 1 )

暦では「大暑」を迎えた昨日、打ち合わせを終えた足でそのまま横浜・桜木町へと向った。午後四時、桜木町駅から野毛動物園方面へと急ぐと案の定目指す店の前では長い行列が出来ていた。

普段は午後五時開店の居酒屋『武蔵屋』だが、この日は一時間前倒しにしての口開けとなった。
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何故ならば、前日の新聞に「3杯屋、歴史に幕」の記事が出たからだった。

御歳93歳の喜久代おばちゃんが横浜国大の学生アルバイトたちと切り盛りする小体の居酒屋「武蔵屋」が、今月一杯で店を閉じることになった。
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現在、木・金曜日の週二日しか営業をしていないので、今週と来週の4日間で終わりとなる訳だ。
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酒場番長の矢野寛明さん、プロモデラーのMAX渡辺さんも少し遅れて到着だ。
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看板猫のクロも行列が気になるのか、覗きに来ていたナ。

「コップ酒は、一人3杯まで」先代の木村銀蔵さんがお客さんの躯を気遣い酒は3杯までと決め武蔵屋を始めたのが、今から69年前、昭和21年のこと。元々、大正時代に横浜港近くの酒屋の一角で立ち飲み屋としてスタートした。戦後、この野毛に移転して「武蔵屋」として始めたのだナ。'83年に銀蔵さんがお亡くなりになった後は喜久代おばちゃんと妹の富美子さんの二人でこの店を継いだのだ。

3年前には女優の五大路子さんが「野毛武蔵屋 三杯屋の奇跡」と云う舞台を上演したり、林文子横浜市長が直々店まで感謝状を持参した等、横浜では大変有名な居酒屋だ。

古き良き昭和の香り漂う木造の建て屋は、売却され取り壊されると聞いた。とても残念でならないが、喜久代おばちゃんが決めたことだから仕方が無い。夕べは1時間半程並んだが、この店で酒を酌み交わした友たちのことを思い出しながら、ゆっくりと3杯の燗酒を味わった。
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仙台に赴任中のビリー隊長やブラジルに赴任中の浜田信郎さんとも此処でご一緒したネ。

しかも、昨日は我が酒朋たちが沢山集まっていた。開店と同時にカウンターに座ったのが、ヨシタカさんとヒロミチ君、奥の座敷には「野毛ハイボール」の店主、佐野さん。
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僕の数人前にはNMBEプロジェクトの庄子さんとレコード番長の須永辰緒さん、そして僕の後ろには、チャンピオンやボヤちゃん、牛太郎仲間の大沢さんなどが並んで居たのだナ。
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待った後のビールは最高に美味い!
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玉ねぎの甘酢漬け、おから、鱈豆腐、お豆、納豆、お新香といつもの定番料理が順序良く出た訳だが、この日は五菜に加え最後に赤飯が出て来た。
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おばちゃん、最後に粋な計らいをしてくれたネ。
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この鱈豆腐ももう食べ納めかと思うと寂しいナァ。
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なみなみと注がれた燗酒は、口を持っていかないとこぼしてしまう。

壁に掛けられた多くの文化人たちの色紙をあらためて眺めた。日本画家の平山郁夫さん、洋画家の中西繁さん、コラムニストの青木雨彦さん、作家の川上弘美さん、新井満さん、内館牧子さん等々、皆個性溢れる言葉を残していた。その中でも僕が大好きなのが青木雨彦さんの色紙だ。

      塗箸の剥げて小芋の煮ころがし

武蔵屋の塗り箸、今は面取りした箸に代わったが昔は丸くてスグにコロコロと転がって机から落ちてしまうことが多かったのだナ。玉ねぎの甘酢漬けの皿やおからの皿で上手く箸をはさんで落ちない様に工夫しながら燗酒を呑んだことも今では愉しい思い出となった。

遠くから蝉の鳴く声が聴こえてきた。開け放たれた窓から時折流れ込む風も夏の武蔵屋の憩いだった。横浜で育った画家、中島千波さんが色紙に描いた武蔵屋の木枠の窓辺の絵が僕らの座ったテーブルの横に掛けられていた。
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この絵ももう見納めか、と感慨深く眺めてしまったナ。

     尋ね人尋ねあぐねて赤蜻蛉(とんぼ)

こちらは、新井満さんの色紙から。
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一時間程、瓶ビールと3杯のコップ酒を愉しんだ。
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気心しれた酒朋たちと酒を酌み交わせたのも最高の思い出となった。
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喜久代おばちゃん、永い間本当にお疲れさまでした。まだまだ元気そうだし、ゆっくりと休息してくださいませ。

そして、呑ん兵衛の赤蜻蛉たちは、夕暮れの街へとハシゴしたのだナ。
by cafegent | 2015-07-24 12:02 | 飲み歩き